「ふーん。で、柚珠奈はやっぱり樹くんの方が良かった訳ね」

「良かったっていうか‥‥素敵な人だけど好きになれそうじゃなかったってだけ。それに前から言ってるけど、私なんかじゃ樹くんにつりあわないから」

お母さんもお父さんも当然というべきか、昔からやたら私と樹くんをくっつけたがる。私が可愛いと思うのなんて、親の欲目だって分かってないんだ。

「だって、お似合いだもの。樹くんだって柚珠奈にだけ凄く優しいし」

「樹くんはみんなに優しいよ。私の世話を焼くのは幼馴染としての責任感と、お母さん達が頼むからだから」

自分で言い切って、ちょっと落ち込んでしまう。

私の恋愛拒否症が治ったら、誰かを好きになったら、安心した安心した樹くんは私から離れていくのかな。彼女とか作っちゃうのかな。

その方がいいって分かってるのに、未来を想像して胸が苦しくなる。

カフェオレのカップを両手で抱えたまま黙り込んでいたら、ふいに携帯が電子音を響かせた。この音はメッセージの着信だ。