「理一君、ありがとう。私、今日は樹くんと帰るね」

「ダメだ。今日は最後まで俺が柚珠奈の面倒見るって言っただろ」

樹君から私に視線の向きを変えた理一君のこわばった声に、樹くんがふっと笑いを漏らした。

「お気遣いは無用です。花村のご両親も俺が送ることは了承してますから」

言葉遣いは完璧な敬語なのに、その表情や声音はどこか馬鹿にしてるような印象を与える。理由は分からないけど、きっとワザと、だ。

「合コン行くのを止めなかった時点で、君に柚珠奈を送る権利はないと思うけど?それとも気楽な学生の君には止める覚悟はまだなかったかな?」

挑発にのった理一君の、分かり易く子ども扱いしたセリフにも目を眇めるだけで、感情を露わにしたりもしない。

「僕が学生なのは否定しませんけど、気楽な立場ではありませんよ。親の跡を継げば良いだけのボンボンより、よっぽど覚悟を持って生きてますしね」

「っ!樹くん、それは言い過ぎだよ」