「いや、これが良い変化を生めばいいなって言ったんだ。いつまでも柚珠奈を恋愛拒否症にしておくわけにもいかないしな」

「そうだね。一生独身って生き方もありだけど、恋愛はしたいもん」

誰かを愛したり愛されたりする気持ちって素敵だから、私もちゃんと経験したい。

「じゃ、計画もきまったし、ラーメン食べに行くか」

樹くんに腕をくんっと引っ張られて立ち上がった勢いで、そのまま抱きしめられた。

「柚珠奈の心にずっとかかってる呪い、といてみせるよ」

頭の上から響く柔らかな声はそれだけで、私を安心させてくれる。

「呪い?」

「そ、呪い」

問うように聞き返したのに、もう一度繰り返されてしまった。どうやら今夜、答えるつもりはないらしい。

謎な言葉は自分への宿題にして、私はドアに向かう樹くんの後を追った。