「冷静に考えて判断できるから、かな。
考えてもみろよ。さっきまで楽しく飲んでいた相手を目の前にして、アルコールの入った頭で冷静に考えられる訳がない。それに、誰かに話してるうちに自分でも気づいてなかった事を知ることが出来る」

「そう言われたら、そう、か、なぁ」

なんだかまるめ込まれた感がない訳じゃないけど、間違ってるとは思わないししたがっておこう。それに私の事を過保護なまでに大事にしてくれてる樹くんが考えてくれれるんだもん。

一種の刷り込みみたいなものかもだけど、小さいころから私にとって樹くんは絶対的に信じられる存在なのだ。その感覚はちょっと親とか家族に対する信頼にも似てる。

「そう思うと、樹くんは精神安定剤じゃなくてお兄ちゃんかも」

いないから分からないけど、きっと頼れる自慢のお兄ちゃんがいたらこんな感覚なのかもしれない。
そう考えれば、私の樹くんへの気持ちはブラコンな妹のそれと一緒なんだろうか。

「お兄ちゃん、か。やっぱりやり方、間違えてたみたいだな」

「ん?」

考え込んでいて、樹くんの言葉を聞き逃してしまった。