小さい頃、私が天使だと思った樹くんは美しさをキープしたまま成長して、見惚れる美形になった。

国枝 樹(くにえだ たつる)、私の幼馴染。

写真家の父親とお嬢様育ちの母親の一人息子って家庭環境だからか、樹くんは昔から世俗にまみれていない上品さを持った子供だった。
従兄弟や幼稚園で一緒に遊んでいた男の子達とは全然違っていて、幼い私から見てもキラキラしていたし、ノーブルさが漂ってさえいた。

幼馴染だけど、樹くんと私は家が近所ってわけじゃない。学生時代の友人だった母親達が子連れで会う度に一緒に遊んでいただけだから、遊んだ回数だって多いわけじゃないし。多くっても2週間に一度、小学生になってからは2ヶ月に一度くらい。

でも会うときは数時間、べったりと2人だけで遊ぶし、何より母親同士が友達だという不思議な安心感で驚くほどに仲良しになった。

自分で振り返っても、なんでこんなに仲良くなったのか疑問に思う事がある。多分、異様に気が合ったのだろうけど、それにしたって不思議。

そう、あのころからずっと‥‥‥。



「ゆーずな、おい!まさか目を開けたまま寝てるのか?」