でも学校中で樹くんと帰る私は有名になって、当然なことに私たちは付き合っているのだと認識されていたから、校内で恋愛相手を探すことは絶望的だった。
私がどんなに否定したって毎日わざわざ違う高校まで迎えに来てる樹くんを見てれば、誰も信じてくれるわけがない。

だから学校中の男子に相手にされなくなった。まぁ元からそんなにモテてるわけでもなかったけどね。
あんな極上の彼氏がいる子を彼女にしようだなんて、そんな面倒なことにトライしようと考えるのはよっぽど自意識過剰なヤツくらい。でも、そんなのはこっちからお断りだ。私は戦利品でもないし、プライドを満足させる為の道具でもない。みんなが格好良いと言う彼氏から奪ったって自慢させるためだけに付き合うつもりもない。

そんなこんなが重なって、私は樹くんだけじゃなく、他の男子も好きにならなくなってしまった。

好きになろうとは、した。高校だって共学だったんだし、それなりにカッコ良い男子もいた。たとえ向こうに好きになってもらえなくても、私が好きになる事は出来る。

でもダメだった。樹くんを好きにならなくなった副作用みたいなものかもしれない。

あんなに素敵な樹くんでも好きにならない私の心は恋愛において、仮死状態とも言える事態に陥ってしまったのだ。