「なんにせよ、とにかく会ってからだ。柚珠奈の大事なお祖父様だし、俺だってちゃんと祝福して欲しいと思ってる。そんな顔してないで、俺に任せて、柚珠奈は隣で座ってたらいいよ」

「ん、ありがと」

ジャケットを握る細い指に自分の手を重ねたら、やっと柚珠奈が微笑んでくれた。


「あのさー、盛り上がってるとこ悪いんだけど、早く入ってくれる?老人は気が短いんでね」

お互いを見つめる俺たちに、無粋な声がかかる。

見れば、玄関のドアを開けた、不機嫌な理一さんだ。多分、彼も松木氏に呼び出されて仕方なく来たのだろう。

「すみません、緊張してしまったのか、なかなかドアを開ける勇気が出なくて」

殊勝に挨拶してみたが、理一さんは軽く首をすくめただけで屋内に入ってしまった。状況を考えれば仕方ないが。




迎えられた応接室、お祖父様とお祖母様が並んで座るソファの向かいを勧められた。若干の緊張を感じながら、軽い笑顔を浮かべて自己紹介と挨拶をした。