恋人になって初めての幸せな朝を迎えた火曜日から四日、せっかくの土曜日に俺たちは松木邸の前に立っている。

「樹くん、ホントにごめんね」

「柚珠奈が謝ることじゃないだろ。それにいつかはご挨拶に行かなきゃと思ってたんだし、ちょうどいいさ」

可愛い孫同士の結婚が叶わないと知った柚珠奈の母方の祖父、松木朔太郎氏から呼び出しがあったのは水曜日。理一さんから柚珠奈にフラれたと報告を受けて直ぐに、娘である柚珠奈の母親に電話があったのだそうだ。


『そりゃあ、もう、静かな口調だったの。あの激情型のお父様が静かに怒るなんて、私達が結婚の許しをもらいに行った時以来で。怖すぎて、電話口で震えちゃった』


柚珠奈と一緒に挨拶に行って欲しいと言った花村のおばさんは思い出したのか、ぶるりっと体を震わせていた。

ま、松木氏の反応は正しいっちゃ、正しい。
俺はこのまま一生柚珠奈を手放すつもりがないのだから、今日は結婚の挨拶でもあるのだ。

『大丈夫ですよ。俺がいかに柚珠奈を大切に考えているかを知って頂ければ、ちゃんと分かって頂けます』