彼氏を作るかどうかなんて、誰かに許可を取ることじゃない。ましてや同い年で幼馴染なだけの樹くんに許可を取る必要もない。

でも、強い口調で言い切る樹くんに反論出来なかった。

こういうトコが樹くん離れ出来ない理由の一つだとは思うけど、樹くんに嫌われてまで彼氏を作ろうとは思えないんだもん。

「‥‥ごめんなさい」

俯いて小さな声で謝ると、樹くんが一つため息を吐いた。

「いや、俺も感情的になって悪かった。柚珠奈が軽率な事する訳ないって分かってるのに。ごめんな」

そのまま私をそっと抱きしめて、ゆっくりと背中を撫でてくれる。


樹くんの腕の中で私はこんなにも安らぐのに、私達は恋人じゃない。ただの幼馴染。

それはまるで柔らかで甘い鎖。こんなにも幸せなのに、ずっとは続かない。

だって私は樹くんを好きじゃないから。樹くんは私を愛してないから。