まさか王太子殿下が関わっているとは思わず、一筋縄ではいかないお話で、シルディーヌは驚きを隠せなかった。

これでは侍女増員は望めないと、がっくりと肩を落とし、握っていた拳を開いてため息をついた。


『シルディーヌ・メロウ。気を落とすことはありません。どうしても増員を望むのなら、交渉してみるといいでしょう。あなたが頼めば、鬼神と呼ばれる鉄の心を持つ騎士団長でも、心を動かし、人事の検討をしていただけるかもしれません』


侍女長はシルディーヌを激励するように、わずかに微笑んだ。

今は一名のみの許可だが、南宮殿の管理者である騎士団長がもっと人数が必要だと実感すれば、人が増える可能性があると侍女長は言った。


ならば、アルフレッドに直接交渉するしかない。

以前食堂などの汚さを訴えたときは、反対に仕事の厳しさを説かれたが、今回の交渉はまったく質が違うのだ。

うまく頼めば増員してもらえるかもしれない!

侍女長の言葉で再び気持ちを奮い立たせたシルディーヌは、改めて拳を握りしめて侍女長室を辞したのだった。

そして頭の中で言いたいことを整理しつつ、意気揚々と朝の挨拶に来たわけだが……まさかいないとは……。


遅刻かしら?と考えて、ふと思う。

そういえば、アルフレッドはどこに住んでいるんだろうかと。

騎士団員にも王宮内に専用の寮があると聞いているが、アルフレッドもそこで生活をしているんだろうか。