「シルディーヌ、それ、すごく大変だわ」

「侍女を増やしていただいた方がいいわ」


キャンディとペペロネが気の毒そうに眉を下げる。

みんなの仕事は仲間がいるお陰か、それほどキツくないと言う。


「シーツ交換や清掃はあるけど、ペアを組んでやってるの。シルディーヌみたいにひとりじゃないわ」


今日はアクトラスに手伝ってもらったからシルディーヌも一応ひとりじゃなかったが、彼は毎日手伝ってくれるわけではない。


「増やしていただく……そう、そうよね!?」


シルディーヌは目から鱗が落ちた心持ちがした。

仕事のことももちろんだが、それよりも大事なことに気がついたのだ。

シルディーヌひとりだから、『襲われる』だの『男ばかりで危険』だのとアルフレッドは言うのだ。

複数いれば、『シルディーヌは団長の女』じゃなくても大丈夫じゃないか!

増員を侍女長にお願いすればいいのだ。簡単な解決法だ。アルフレッドも反論できないはず。

シルディーヌはひそかに拳を握り、明日にでも侍女長を訪ねることに決めた。


「みんなありがとう。でもね、今日はいいこともあったのよ。フューリ殿下にお会いできたの!」


みんなから一斉に驚きの声があがり、場が一気に華やぐ。


「どんなお方なの?」

「やっぱり素敵?」


矢継ぎ早に質問が飛んできて、シルディーヌは嬉々として答える。

やっぱりみんなの最大の憧れは、騎士団員よりも殿下だ。

それからは笑い声も混じり、夕食の時間は楽しく過ぎていった。