「なるほど、そうか。害虫に驚くとは、実に女性らしい愛らしさだな」
しかし今にも殺されそうな叫び声だったぞ?と言いながらシルディーヌの体を離したのは、ライトブラウンの髪色に青い瞳の見目麗しい青年だった。
爽やかな笑顔を見せているが、堂々として落ち着いた雰囲気はアルフレッドよりも少し年上に思える。
「あの、大変お見苦しい姿をお見せし、申し訳ございません。私は、シルディーヌ・メロウと申します」
「うむ。メロウといえば、サンクスレッドの子爵家の家名だな? かの地は、幼いころに訪れたことがある。山脈に囲まれ、美しい湖があるところだ」
「はい。その通りでございます。我が家名と領地をご存知とは、大変光栄でございます」
「しかし害虫はどこにでもいるものだが、しっかり退治しなければならないな。でないとまた出現し、君が悲鳴を上げる」
青年の後ろには三人の従者が控えている。
若いが静かな威圧感があり、いずれも身なりが立派だ。
青年がスッと手をあげると、その三人が無言のままサッと動いて食堂の中を探り始めた。
アクトラスもテーブルの下を覗いたりして、一緒に探っている。
その様子を眺めている青年のことを、シルディーヌは見覚えがある気がしていた。
内面から品が滲み出ている高貴な風貌と凛とした口調は、いったいどこで……。


