「よし、帰るぞ」


シルディーヌはスッと抱き上げられて、そのまま馬に乗せられた。


「え!? 待って、アルフ。本当に建物を壊してしまうの?」

「無論だ。あんな建物が残ってるから、犯罪の温床になるんだぞ。今すぐ壊した方がいい」


アルフレッドは冷淡に言って、シルディーヌの後ろにひらりと乗った。


「そ、そうかもしれないけど。ペペロネがまだ中にいるわ! それにほかの女の子たちも! お願い、助けてほしいの」


シルディーヌが懸命にお願いすると、アルフレッドは大きく深いため息をついた。


「ちっ、仕方がないな。フリード、壊すのは、中にいる女どもを助けてからにしろ。全部お前の判断に任せる」

「はい! もちろんそう致します!」


フリードの顔が明るくなったのが、夜目でも分かった。

団長の命令以外のことをするのは、副団長でも難しいのだと思える。

フリードはシルディーヌに感謝するように頭を下げていた。


「フリードさん! ペペロネは三階の部屋にいるの。ほかの子たちは二階にもいたわ。それから、シルディーヌは心配ないって、ペペロネに伝えて! それから、人命最優先でお願い!」


馬が動き出したため、身を乗り出して叫ぶようにお願いすると、フリードがぐっと親指を突き立てたのが見えた。