もしかしてシルディーヌだけ助けられたのだろうか。

ほかの騎士、アクトラスやフリードはどこにいるのか。


「アルフ? ほかの騎士たちは?」

「外で待機している」

「ひ、ひとりで、乗り込んで来たの!?」

「ああ、そうだ。煩いからもう黙ってろ。いろいろは外に出てからゆっくり訊いてやる」


アルフレッドはあっという間に階段を駆け下り、建物の外まで運ばれたシルディーヌが目にしたのは、大きな大砲二台と黒龍騎士団員たちだった。

ものものしい装備で、まるで戦争でもしているかのよう。

ドーンという轟音は、大砲が建物に当たったものだったのだ。

もしも建物が崩れたら、シルディーヌは助けられる間もなく天に召されていたかもしれない。

そう考えるとぞっとした。


「あれは、昔使われていた軍の拠点のひとつで、無駄に丈夫に造られてるんだ。ちょっとやそっとじゃ壊れない。ちょっと前から組織のアジトとして目星をつけていたとこだ」


シルディーヌは火のそばにある切り株の上にそっと下されて、団員が差し出したコップ一杯の水を飲んだ。

気が落ち着いて改めて建物を見れば、月明かりの下に黒々とそびえるそれは、とても頑丈そうな建物だった。

大砲の玉が当たったようなのに、パッと見崩れているところがない。


「ところでお前、どうやってさらわれたんだ? 俺が助けに行くまでのことを詳しく話せ」