「え? え? 今度はなんなの? いやっ、怖い!」


再びテーブルの脚にしがみつくと、大きな音とともに扉の取っ手がビュッと吹っ飛び、バキバキに割れた扉が部屋側にドサッと倒れ込んで来た。

柱に残された蝶番がプラプラと揺れ、埃がもわもわと空を漂う。

その向こう側に立っていたのは、血に染まった剣を持ち、鬼神のような恐ろしいオーラを放った仁王立ちの……。


「え、あ、アルフ!?」


恐ろしほどに鋭く光る眼光が、部屋の中を素早く見まわしている。

テーブルにしがみついて唖然とするシルディーヌを認めた瞬間、アルフレッドは無残にも木の欠片となった扉を軽々と飛び越えてきた。


「……やっと、見つけた」


鬼神のような風貌とは裏腹に、喉の奥から絞り出すような声を出され、シルディーヌの胸がちくんと痛んだ。

たいそう心配をかけていたのだ。


「た、助けに来てくれたの?」

「無論だ。痛いところはないか?」

「えっと、背中とお尻が少し痛いわ」

「なに!? 奴らに乱暴されたのか!?」

「たぶん違うわ。硬い床に寝ていたからだと思うの」

「む、今すぐここから出るぞ」


テーブルの下に潜り込んで避難している状態のシルディーヌは、アルフレッドに引き出されて片腕で軽々と抱き上げられた。


「きゃっ」

「怖かったら、しがみつけ」


言われた通り肩にしがみついて廊下に出て、シルディーヌは「あ!」と声をあげた。

アルフレッドが斬ったであろう男たちが血だらけで倒れており、うめき声をあげてうごめいている。

それにシルディーヌの部屋のぼろぼろになった扉以外は、どこもきっちり閉まっていて、ペペロネの部屋であろう扉もそのままだ。