「佳奈は?」

「わたしは...」

由美に聞かれ言葉が詰まった。


わたしが通っている学校は進学校だから、ほとんどの人が大学にいく。

お父さんはわたしに行って欲しい大学があるみたいだけど、その大学を書くのもいいなりになっているようで気がひける。


それに、お父さんの希望する大学に行けなかったとしても、どこか別の大学に行くだろうな、とは予測していた。

だけど由美みたいに何を勉強しに行くかは全く考えていなかった。

いや、あえて考えないようにしてたのかもしれない。



「まあ、大学には行くよ」

曖昧な感じで由美の質問に答えた。

「そんなことわかってるよー」

由美は笑いながら言った。


別に由美の言葉が気に障ったわけじゃない。

むしろ、そう思うのは普通だと思う。


ただ、わたしもこの【普通】の人間なんだ、と思うと面白くなかった。


かと言って普通のいう道を外れる勇気があるのか、と聞かれるとそれはない。

それに、大学に行かないとなっても、特にやりたいこともない。


自分が何をやりたいかもわからないなんて…。

そう思うとため息が出た。


将来、就職して結婚して子供もできて、お金に困らないくらいの暮らしができたら、たとえ普通といわれる進路を選んだとしても、ほかの人と同じ幸せかと言われたら、それは別物だと思う。