二人で秘書課に戻り、会議の準備をして副社長室に急いだ。


腕時計を見れば5分前だ。急いでノックをして副社長室に入る。



「副社長、会議のお時間………。」



入るなり、目の前で立ち止まる副社長に驚いた。顔が怒っているが、構わずに話し掛ける。



「副社長、用意は大丈夫ですか?」


「………ああ。」


「では会議室の方へ……キャッ………。」



扉を開けようと背を向けた私を副社長が抱き締めてきた。


驚きに変な声が漏れた。



「ちょっと副社長!」


「浮気。」


「はっ?」



耳元で囁く副社長に振り向いた。顔がやっぱり怒っている。


でも今は時間がない。



「副社長、お時間です。」


「チッ……、会議が終わったら、一緒に副社長室に来い。話がある。」


「………話…………。」



副社長が扉を開けて出ていく後ろを追い掛ける。



「松井、逃げるなよ。」



副社長は意味不明な言葉を吐き出し、会議室の扉を開けた。