尚輝がハンバーグをフォークに刺して、私の目の前に差し出す。


私はそのハンバーグを見つめ、それから尚輝に視線を向けた。



「ほら、口を開けろ。」


「………。」


「朱里、口を開けろ。」



静まり返るテーブルにクスクスと笑いが漏れる。尚輝の頬が若干染まっている気がする。


唖然と尚輝を見つめれば、完全に照れているのが分かる。



「朱里、朱里、ほら。」



真央の声にチラリと見れば、口を開けている。もう一度尚輝を見る。



「朱里、口を開けろ。」


「…………。」



素直に口を開ければ、尚輝のハンバーグが口一杯に詰め込まれる。



「おいおい、尚輝が必死だぞ。」


「聡も茶化すな。黙って食べろ。」


「本当、手の掛かる兄貴。」



悠木さん、賢人、陽輝が呆れたように私達を見ている。その視線に私も恥ずかしくなる。



「朱里さん、許してやって?こんな兄貴は初めてだし。」


「尚輝、どんだけ必死なんだ。ははっ、マジで笑える。」


「聡………。」



尚輝の睨みが悠木さんに向けられるが、構わず笑う悠木さんの心臓は鉄で出来てるに違いない。