いつもの朝を迎え、会社へと歩いていく予定だったが――――。



「朱里、行くぞ。」


「えっ?いつものように徒歩で行くよ?」


「副社長の俺より遅くに出社するつもりか?」


「………。」


「朱里、行くぞ。」



有無を言わさず、副社長と二人で出社だ。


一緒に暮らし始めた私達だが、尚輝は私と一緒の時間に起きて支度する。


必然と同じ時間に出社できる。



「ゆっくり寝れば?」


「一緒に出掛ける。嫌なのか?」


「嫌では……ただ平社員だし。」


「俺の嫁になるだろ?副社長夫人だ。」


「今は平社員。ただの秘書。」


「すぐに副社長、いや社長夫人かもな。」



クスクスと笑う尚輝が車を運転している。



佐伯商事の副社長夫人?



「信じられないね?私は普通の家庭なのに。」


「俺と出逢った運命だろ。」


「運命か。」



窓から見える景色を眺める。