すぐにでも消えてしまいそうだ。
触れることすら、許されなさそうだ。


彼は、ふらっといなくなってしまいそうだ。いなくなってしまえそうだ。


怖くなって、苦しくなって、それでも私はただじっと見ているだけだった。


夏の夜は、全てを嘘にできそうな不思議な力を持っているようにも思えた。


全てを、なかったことにできてしまいそうだった。