「俺、優しくなんかねえよ」 そういって、ベランダに向かう彼。 開いた窓から、夜風が入り込む。 ゆらりと揺れるカーテンの隙間から、私はただ彼の背中を目で追って、脳裏に焼き付けるだけだった。 光と夜の闇の間で灯るその姿は、 淡くて、履かなくて。 息を吹けば消えてしまいそうだった。 彼の言葉の本当の意味なんて、 誰にもわかりはしない。