それでもいいって、いったじゃん。

「安心しなって、俺は葉月を襲ったりしないから。勿論、酔わせて襲うこともしないさ。」

繋いだ手の先の温もり。
夜空の月はどうにも彼を引き立たせる。
淡くて消えてしまいそう謎の姿は、月の光を集めたようだった。


沈黙していた私に、彼は笑っていた。


「可愛いね、なにも言えないなんて。」


なにも、言わないわけじゃないの。
なにも、言わないだけ。


手を、出してくれたっていいのになんて。言えるわけがないよって、少し下を向いた。

まだなにも知らないあなたの家に、向かう。


言い表せない興奮が、
私をジリジリと侵食していく。