「ところでお姉さん、名前は?いつまでもお姉さんっていうのもなんか、堅苦しいし。呼び出しにくいじゃん。俺の寂しいときに。」
彼の一言一言が、もう突き刺さる棘のようで、触れるだけで痛い。
「さあ、なにがいい?」
穏やかに笑う彼は、
私を照らす月なんかより、もっと優しく見えてしまった。
火照った顔をどうか照らさないで。
ばれてしまわないように。
好きだという気持ちがばれてしまったらこの先二度と、会ってもらえなくなってしまうだろうから。
「えっと…名前、だっけ」
わざとらしくとぼけて、
どうしようね、なにがいいんだろって、考えるふりをした後で
「名前、決めていいよ。」
なんて。
君は、おどけたように話す。
