陽だまり。


春といえば別れと出会いの時期ー。
桜舞い散る暖かい春の風が
頬をなでて眠気を誘う。

俺は高校入学式だというのに
それほど急ぐこともなく
ただいつも通りに制服に着替え髪を整えた。

「忘れ物ない?今日は晴れてよかったわね。」

朝食を食べ終えたテーブルを片付けながら
にこやかに話す母。
何かいつもと違うことといえば
制服は当然新しく着慣れないせいか
少し違和感すら覚える。
入学式ということもあって
胸ポケットには伊崎 大翔(ひろと)としっかり
名札が付いている。

学校に近づくと正門から
手を振る人影が見えた。

「大翔ー!おせーよっ!
今日は入学式なんだから
早めに来いよって昨日言ったろ!?」

見慣れた顔,聞きなれた声ー
陽輝(はるき)は幼稚園からの親友だ。

「お前相変わらず声でかい。
早めにってまだ式まで20分もあるぞ。」

「まぁまぁ!俺らクラス同じだし!
てか俺,さっきまで教室に居たんだけど
席近いとこにめっちゃ可愛い子いてさ!
学校生活それなりに楽しめそー!」

目をキラキラさせる陽輝を横目に
俺は大きなあくびをした。