オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~

私、感じてたんだな。劣等感。

どうして向居が嫌いなのか。
どうして向居の言動にいちいち腹が立つのか。

それは私の中で育っていた劣等感が敏感に反応していたせいだ。


そうか。ああ、そうだったんだな。

私ずっと悔しかったんだ。みじめだったんだ。

そうとも気づかず、ひとりで躍起になってピリピリして。
情けないな。
こんな自分、心底かっこわるい。

そりゃ基樹にも嫌われるはずだ…。

ほんともう私は、本当にもう、どうしようもない。


私はビールを飲み干した。すっかりぬるくなった苦みは、ちっとも美味しくなんかない。


「嫌ってなんかないわよ、向居のこと。じゃなきゃ、ごっこでも一緒に旅行なんてしないわよ」


言い捨てると私は立ち上がった。
自分のみっともないところ、嫌なところにどんどん気付いて胸焼けがする。
これ以上は居た堪れない。押し潰されてしまいそうだった。身体の中から湧き出す苦しいなにかに。


「もういいのか? こんなに残して」

「手付けてないの食べていいわよ。私、お風呂いってくる」

「逢坂」


荷物から風呂道具を引っ張り出すと、なにかまだ言いたげな向居をおいて私は部屋を飛び出した。