「よく言うわね。来たっていつも一人だけ早く抜けて帰っていたくせに」
「ぶっちゃけて言うが、俺はあんまり酒が強くないんだ。恥をかく前に退散したかったんだよ」
「とか言って、どうせ他のライバルから必要な情報だけを盗んで、あとの無駄話には付き合うつもりがなかったんでしょ?」
「心外だな」
向居は苦笑した。
「俺だって愚痴くらい吐きたかったさ。けど他の奴のペースに合わせていたら、いつも先に酔いが回ってしまって」
なんて冗談めいて言うけど、自分とはレベルが違う連中とつるむのは時間の無駄とでも思っていたのが本音だろう。
今になれば解かる。
きっと私たちと向居は、あの時から見ている景色が違っていたんだ。
まわりは私と向居のことをライバルと言う。
私もそう思っていた。
けど本当にそう言えるのだろうか…。
向居は押しも押されぬエース。
正直、私はそれに食らいつくので精一杯。
ライバルを自称しても、実際は同じ土壌にも立てていない。
私と向居は対等なんかじゃ…ない…。
ああ、そうか。
不意に胸のもやもやの正体に気づいた。
劣等感、だ。
「ぶっちゃけて言うが、俺はあんまり酒が強くないんだ。恥をかく前に退散したかったんだよ」
「とか言って、どうせ他のライバルから必要な情報だけを盗んで、あとの無駄話には付き合うつもりがなかったんでしょ?」
「心外だな」
向居は苦笑した。
「俺だって愚痴くらい吐きたかったさ。けど他の奴のペースに合わせていたら、いつも先に酔いが回ってしまって」
なんて冗談めいて言うけど、自分とはレベルが違う連中とつるむのは時間の無駄とでも思っていたのが本音だろう。
今になれば解かる。
きっと私たちと向居は、あの時から見ている景色が違っていたんだ。
まわりは私と向居のことをライバルと言う。
私もそう思っていた。
けど本当にそう言えるのだろうか…。
向居は押しも押されぬエース。
正直、私はそれに食らいつくので精一杯。
ライバルを自称しても、実際は同じ土壌にも立てていない。
私と向居は対等なんかじゃ…ない…。
ああ、そうか。
不意に胸のもやもやの正体に気づいた。
劣等感、だ。



