オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~

再び指摘されて、お肉のひとかけらを反射的に口に入れる。

向居も同じ特産牛のステーキを二切れ一気に頬張ると、よく噛んで味わいビールでぐいと飲み干した。
いい食べっぷり。自分で食べるよりも美味しさが伝わってくる。


私が中庭で頭を冷やしているうちに、向居は浴衣に着替えていた。
がっしりとした肩が羽織をまとって余計に際立っている。
帯がすっきりと締まったウェストは贅肉ひとつついていなさそうで、最近太ってきた基樹ととても同い年には見えなかった。
鍛えているのかな。
向居ってたしか大学までずっと運動部だったのよね。
新卒の時の交流会で自己紹介していたのを覚えている。

当時は、いかにも運動部って感じの生真面目というか無愛想な雰囲気だったけど、今はそこに大人の自信と余裕みたいなものが乗って男の魅力をかもしだしている。
ほんとに、改めて思うけど、いい男だ。

なんてまたぼんやりしていたら、ついに向居がため息をついた。


「この調子じゃ、まったく意味ないな」

「え?」

「会話だよ。料理の感想どころか『美味しいね』も言い合えないんじゃ、恋人同士でいる意味がないだろ」


またそれか。
私は疲れを覚えて吐息する。