オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~

トーンダウンした声が、基樹の心情を生々しく表しているように感じた。

胸やけするように、心臓がざわつく。
基樹の言葉だけが、頭の中でぐるぐるしている。

見下していた。憐れんでいた。

確かに…どこかでそう…思っていたのかもしれない…。
不甲斐ないけど、それで基樹がいいなら、とうやむやにして見放していたのかもしれない。

基樹本人がそんな自分に苛立っていたことに、気づいていたのに。


そして基樹はそんな私に気づいていた。

ずっと前から、嫌っていた…。


「ごめん…」


涙も出てこなかった。
ただそう一言だけ言うのが精一杯だった。

呆然と立ち尽くす私に舌打ちを残して、基樹はスマホと財布だけ持って部屋を出ていった。