オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~

「だからっ明日から旅行でしょ?? 準備はすませたの? ってきいてるの」

「はぁ? 旅行って…知らねぇぞ??」


は?

思わぬ返答に唖然として、数瞬後、怒りが噴き上げた。


「ずっと前から言ってたじゃない、二泊三日で旅行するって!」

「はぁずっと前!? んなこと覚えてねぇよ!」


ああほらまただ!
またこれだ!
私の話、全然聞いてないトラブル。

いつも片手間に聞くから、耳から耳へと私の話したことが脳を素通りしてしまう。
ゲーム、スマホ、テレビ。私の話なんて、その三つと比べたらどうでもいいことなんだろう。


「まじ最悪。『あそこは俺も前からずっと行ってみたかった、すっげぇ楽しみ』って言ってよろこんでいたのは誰よ!?」

「…あ、あれは…」

「ゲームの方が楽しくて、そっちの楽しみは忘れちゃった? はぁいいなぁ、そんな満喫できるほど時間の余裕があって!」

「…っるせぇよ!」


基樹の声が鋭くなった。
地雷を踏んでしまった。いやもういい、頭にきた。
こんな奴のプライドを尊重してやる義理なんてない。


「んなもん忘れるに決まってるだろ!? おまえの都合で『立て込んでる』だの『別のロケハンに行く』だのってほいほい日程決めた後は、なんの相談もねぇんだから!」

「あんたが楽しみって言うから色々調べて計画練ってやってたのよ! 企画部のコネつかったら普段取れないような予約もとれるし!」

「へぇすげぇ! さすが企画営業部様だな、プライベートの旅行まで勝手に企画しちまうんだな! ああ違った、ロケハンを兼ねての旅行か! さすが出世コース爆走中の逢坂さん、仕事のためならプライベートも巻き込んじまうんだな」

「はぁ!?」

「俺は行かねぇからな、んなクソ旅行。『これが流行よ。ここが一番人気』なんて勝手に決めつけて連れ回されるだけのつまんねーもんなんて御免だからな」


基樹は再びソファに寝っ転がってスマホ画面に集中しだした。