オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~

昼食休憩に入り、後輩とお弁当を囲む。

「向居先輩、最近お弁当なんですね。わぁ、タコさんウィンナー可愛い! でもちょっと意外~」

と、笑う後輩に、私はかぶりを振った。

「違う違う、今日のお弁当は夫が作ってくれたのよ」
「え! 向居先輩が! きゃああ」

予想通りの反応に、つい暴露してしまったことを悔やむ。

「お弁当作ってくれるんですねぇ~。さすが向居先輩、はぁ、きゅんきゅんする」
「……ひとつ、あげようか?」
「いいんですか!? 嬉しいですぅ!」

結婚すれば落ち着くだろうと思っていたのに、柊介の人気は相変わらずだ。

既婚くさい雰囲気をまとえば魅力も半減するだろうと思いきや、手を出してはいけないという背徳感めいた雰囲気がスパイスになってさらに魅惑的に見えるんだとかなんとか、もうわけが解からない。
いっそ幸せ太りでもしてくれればいいのに、と思うが、料理は柊介が担当してくれているので、摂生管理もしっかりしていた。

「でも先輩、その量でお昼足りるんですか?」

と、タコさんウィンナーを頬張った後、後輩が心配げに私のお弁当を見つめる。

「うん大丈夫。なんだか最近食欲がなくて」
「お仕事、少し忙し過ぎるんじゃありません?」
「そんなことないわよ」
「無理しないでくださいね。先輩、最近持ち上がった大型企画にも乗り気でしょ?」
「あら、お見通し?」

仕事はお互い順調ではあるけれど、頭一つ分柊介の方が進んでいると言える今の状況がちょっと悔しかった。
この大型企画を任せてもらえれば、さらに評価が上がるのは間違いない。

笑って見せる私に、後輩は眉をしかめる。

「大丈夫なんですかぁ? 統括の仕事だってびっちり忙しいのに」
「挑戦するだけだもん。失敗したって周りに迷惑かけないもの。それに、あなた達もだいぶしっかりしてきてくれたから、余裕が出てきたの」
「ほんとですか? なら、ちょっと安心ですけれど……」
「大丈夫よ。ありがとう」

お弁当箱をしまうと私は立ち上がった。

「じゃ、この後新企画の打ち合わせが入ってるから」
「あ、例のですね! いつも以上にやりがいがあるやつですよね! 頑張ってくださいね!」
「ありがとう」

やりがいと言うが、後輩が言うのは別の意味でだろう。
例のとは、うちの部署とネット販売部署で共同作業することになった企画のことだ。
つまり、私と柊介が共同で作業に当たるというものだ。

社内での私達はあくまで同僚だ。
夫と一緒に仕事するからって、特別何かが違うことなんて別にないんだけれどもな。