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【都side】
そうしてどたばたと日々は過ぎ、結婚式も無事に終え、私と柊介は晴れて入籍した。
向居都になって、半年が経ったある日。
私と柊介は変わらず同じ職場で仕事に没頭していたが、部署は違っていた。
柊介はネット販売部署に異動した。
販売の主要と言えるこの部署を何年か経験したのちは、昇格は間違いないだろう。
私は企画営業部の統括リーダーをしている。
昇進の意を含んだ部署替えの打診はあるが、まだこの部にいたいという思いもあって悩ましいところだ。
「向居先輩、お疲れ様ですー」
後輩に呼びかけられて振り返る。向居姓にもすっかり慣れた。
逢坂という慣れ親しんだ名字でなくなってしまうのが寂しくて夫婦別姓もチラリと頭をかすめたけれど、結局柊介の姓を名乗る嬉しさの方が勝って、籍に入ることにした。
もろもろの登録名、書類の表示、世間での呼ばれ方……何もかもが向居になって最初は違和感があったけれど、奇麗だった結婚指輪に細かい傷がついてその輝きが鈍り始めた頃には、向居でいることが当たり前に感じるようになった。
【都side】
そうしてどたばたと日々は過ぎ、結婚式も無事に終え、私と柊介は晴れて入籍した。
向居都になって、半年が経ったある日。
私と柊介は変わらず同じ職場で仕事に没頭していたが、部署は違っていた。
柊介はネット販売部署に異動した。
販売の主要と言えるこの部署を何年か経験したのちは、昇格は間違いないだろう。
私は企画営業部の統括リーダーをしている。
昇進の意を含んだ部署替えの打診はあるが、まだこの部にいたいという思いもあって悩ましいところだ。
「向居先輩、お疲れ様ですー」
後輩に呼びかけられて振り返る。向居姓にもすっかり慣れた。
逢坂という慣れ親しんだ名字でなくなってしまうのが寂しくて夫婦別姓もチラリと頭をかすめたけれど、結局柊介の姓を名乗る嬉しさの方が勝って、籍に入ることにした。
もろもろの登録名、書類の表示、世間での呼ばれ方……何もかもが向居になって最初は違和感があったけれど、奇麗だった結婚指輪に細かい傷がついてその輝きが鈍り始めた頃には、向居でいることが当たり前に感じるようになった。



