何も言い返せずにいる都のそばで二人はますます盛り上がる。

「でも私達もうかつでした」
「そうですね、お二人の返答を鵜呑みにし過ぎましたからね」
「今思えば、お付き合いしている節はありましたよね」
「そうそう、向居先輩、よく逢坂先輩にちょっかいかけてましたものね」
「ははは、ちょっかいとはいいな」
「向居先輩ってクールだけど、好きな子は構いたい系だったんですね」
「ばれちゃったか」
「どちらから告白したんですか?」
「もちろん、俺から」
『えーーー!』
「五年の片思いだったんだ。ずっと好きだったのをやっと振り向かせた」
『ええええ!』

何故かまた泣き出しそうになる二人に対し、都は顔を真っ赤にして今にも逃げ出したそうだ。
けど俺はもう免じてやる気はないぞ、都。
さんざん我慢してきたが、もう今更抑える必要はない。

「逢坂先輩の、どういうところが好きなんですか?」
「そうだなぁ、数えたらきりがないが」

と、俺は笑みを浮かべて指を折る。

「まず、可愛いところ」
「はい」
「美人」
「はい」
「努力家」
「はい」
「けどそれを表に出したがらないところ」
「はい」
「ツンデレ」
「ですね」
「けど猫だけには、とことんデレデレ」
「へ~」
「意外と泣き虫なところ」
「へ~!」
「あと可愛い」
「それ二回目です!」
「美人」
「それも二回目です!」

「ああもう黙れ柊介ぇえ!!」

顔を真っ赤にして都が立ち上がった。
すかさず制止する二人。

「待ってください逢坂先輩、聞きましょうよ」
「そうですよぉ、だって二人の時はいつも言われてるんでしょう?」
「いい加減うるさいわよ! あんたたち!」
「ひぃい」
「ひぇええ」

と、二人を縮み上がらせた睨みを今度は俺に向けて、都はぴっと指をさす。

「それに柊介! いい年した男がノロけてんじゃないわよ、馬鹿、色ボケ!」

色ボケ……。

「都。俺は色ボケしてない、ただとことん自慢したいだけだ」
「……!」

今にも地団太を踏みそうな都だったが、今更ながら、周囲から好奇に満ちた視線を受けていることに気付いたようで、ぷいと俺にそっぽを向くと、

「もう今日は話しかけてこないでっ!」

俺にあっかんべをして去って行った。

『かわいい…』

その逃げる後ろ姿を見送りながら溜息をついたのは、俺じゃない後輩二人組の方だった。