「いいじゃないか都。もう関係を隠す必要はないんだから。午前中は大騒ぎでひどかったな。都も疲れただろ?」
「そう言うわりには、柊介は元気そうね」
「解かるだろ? 俺の方は解放感で一杯なんだ。もうこの関係を隠す必要はないんだぞ。清々しいくらいだな」
「ああそう……」
観念したようにふらりと歩き出す都の後を追いかける。
ああ。こうして堂々とオフィスでも都をそばにできる幸せときたら……。
変な表現だが、都への愛情は、つんとした猫にかまいたくなるような、うずうずする感覚に似ている。
小さな鼻と少しつんと上がった唇。
キラキラと勝気さが煌めいている大きな目。
可愛くて胸がうずうずして、片思いをしていた五年の間、何度その顔で睨まれるたびに小さな唇を唇で塞いでやりたい衝動に駆られたか知れない。
そんな少し嗜虐めいた感情は、付き合っていることを公表しても変わらない。
今も、キスしたくて堪らない。
けど、した瞬間平手打ちを食らって夜も口をきいてくれなくなるのは目に見えているので、ぐっと我慢する。
「あら! あなた達結婚するんだってねぇ! いやだわ~美男美女同士でお似合いじゃないのぉ。犬猿の仲って聞いていたのに、ドラマみたいなことってあるのねぇ」
話はすでに食堂にまで広がっていたらしい。配膳係のおばさんがほくほくした様子で一方的に話すと、「これ、サービスね!」とほくほくのコロッケを俺と都の皿に並べてくれた。
「やったな、メンチカツだぞ」
「ありがたいけれど……柊介、半分もらってくれない?」
「せっかくだから食えよ。そもそも都は小食なんだから」
と言うが、都のトレイには消化に良さそうなわかめうどんが乗っている。すでにストレスで胃がやられているのだろうか。
「今晩の夕食は俺が作るよ。あっさりした消化に良いのがいいか」
「ううん、きっといつも以上に疲れているだろうから、がっつりスタミナ系で」
「かしこまりました」
恭しく応じながら、ずずずとうどん一本をすする都を見てつい微笑んでしまう俺だったが、ふと視線を感じて見やる。
ほわんとした表情でこちらを見てくる女子二人がいた。
いつも元気一杯に俺達を見守ってくれていた後輩達だ。
「お二人は理想のカップルです」だの「お付き合いはしないんですか?」などとストレートに言ってくる楽しい二人組で、都はいつも辟易していたが、俺は鋭いなぁと面白く思っていた。
公表した今、この二人の反応が一番楽しみと言えた。
案の定、おいでおいでと手招きすると、駆け寄ってきてすかさず愉快な反応を見せてくれた。
泣き出したのだ。
「そう言うわりには、柊介は元気そうね」
「解かるだろ? 俺の方は解放感で一杯なんだ。もうこの関係を隠す必要はないんだぞ。清々しいくらいだな」
「ああそう……」
観念したようにふらりと歩き出す都の後を追いかける。
ああ。こうして堂々とオフィスでも都をそばにできる幸せときたら……。
変な表現だが、都への愛情は、つんとした猫にかまいたくなるような、うずうずする感覚に似ている。
小さな鼻と少しつんと上がった唇。
キラキラと勝気さが煌めいている大きな目。
可愛くて胸がうずうずして、片思いをしていた五年の間、何度その顔で睨まれるたびに小さな唇を唇で塞いでやりたい衝動に駆られたか知れない。
そんな少し嗜虐めいた感情は、付き合っていることを公表しても変わらない。
今も、キスしたくて堪らない。
けど、した瞬間平手打ちを食らって夜も口をきいてくれなくなるのは目に見えているので、ぐっと我慢する。
「あら! あなた達結婚するんだってねぇ! いやだわ~美男美女同士でお似合いじゃないのぉ。犬猿の仲って聞いていたのに、ドラマみたいなことってあるのねぇ」
話はすでに食堂にまで広がっていたらしい。配膳係のおばさんがほくほくした様子で一方的に話すと、「これ、サービスね!」とほくほくのコロッケを俺と都の皿に並べてくれた。
「やったな、メンチカツだぞ」
「ありがたいけれど……柊介、半分もらってくれない?」
「せっかくだから食えよ。そもそも都は小食なんだから」
と言うが、都のトレイには消化に良さそうなわかめうどんが乗っている。すでにストレスで胃がやられているのだろうか。
「今晩の夕食は俺が作るよ。あっさりした消化に良いのがいいか」
「ううん、きっといつも以上に疲れているだろうから、がっつりスタミナ系で」
「かしこまりました」
恭しく応じながら、ずずずとうどん一本をすする都を見てつい微笑んでしまう俺だったが、ふと視線を感じて見やる。
ほわんとした表情でこちらを見てくる女子二人がいた。
いつも元気一杯に俺達を見守ってくれていた後輩達だ。
「お二人は理想のカップルです」だの「お付き合いはしないんですか?」などとストレートに言ってくる楽しい二人組で、都はいつも辟易していたが、俺は鋭いなぁと面白く思っていた。
公表した今、この二人の反応が一番楽しみと言えた。
案の定、おいでおいでと手招きすると、駆け寄ってきてすかさず愉快な反応を見せてくれた。
泣き出したのだ。



