オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~


【side 柊介】


ピンポーンとチャイムが鳴り、新妻さながらに、俺は弾む足で玄関へ向かう。
ドアを開けるなり「おかえり」と投げかけると、


「ただいま」


と可愛い微笑が返ってくる。毎日のこの習慣が、俺が幸せを噛みしめる瞬間のひとつとなった。

俺と付き合うようになってから、会社から真っ直ぐ俺の家に帰ることが都の日課となった。
それから朝まで一緒に過ごし、別々に出社。
ほぼ同棲の生活を送っている。

都が恒田と住んでいた部屋の契約はまだ続いていたが、恒田は最低限の荷物だけ持って出て行き、イシダだか飯田とかいったあの浮気相手の部屋に転がり込んでいるとのことだった。
当然、それでは完全に都と恒田の関係が切れたとは言い難いので、こうして都が毎晩来ることは俺の安心にもつながっている。


「悪かったな。今夜こそ定時であがるはずだったのに急な要件が入ってしまって」

「いいわよ、私もいろいろと残務があったし」


時間はもう夜の七時を過ぎていた。
この生活は安心ではあるが、厄介なこともある。
部屋の鍵は俺しか持っていないため、必ず俺が先に帰らなければならないということだ。

一緒に帰ろうと言っても都は「いつどこで誰に見られるかもしれないし」と嫌がるし、じゃあそもそも、合鍵を作ればいいだろ、となっても都は断った。

付き合って三か月…。
俺にとっては『もう三か月』だが都にとっては『まだ三か月』なのだろうか…。

じれったい。

正直俺は、都と一緒に暮らしたい。
都は俺のものだと声高に周囲に宣言したい。

だが、じれてもしょうがない。
先に惚れた方が負けだ。
俺は五年も粘ったのだ。十分に辛抱強いはずだ。
都が心の準備をするまで、待つ自信はある。…待ってみせる…。