「見たことがある顔だな」
「…以前に勤めていた飯田です。向居さんにもとてもお世話になりました。お久しぶりです」
冷ややかなまなざしを向けられても、それでも向居を前にするのは嬉しいらしい。先ほどの刺々しい顔はどこへやら、飯田は顔を赤らめ、しおらしい口調で挨拶をする。
けれども、向居の記憶はかなり曖昧だったようで「ああ…」とそっけなく返して続けた。
「転職したのか。でも、そんな必要なかったんじゃないか? 人の彼氏を横取りする卑怯者のスキルはすでに身に付けていたんだから」
飯田のそれまで研ぎ澄まされていた険が一気にもろくなる。
すでに辞めたとはいえ、憧れていた向居に皮肉られるのはこたえるのだろう。
「…卑怯者はどっちですか。仕事で傷ついた彼氏を放っておいて、自分だけほいほい昇進していい思いして」
それでも虚勢を張って、飯田は私に憎しみの視線を向け続ける。
「…以前に勤めていた飯田です。向居さんにもとてもお世話になりました。お久しぶりです」
冷ややかなまなざしを向けられても、それでも向居を前にするのは嬉しいらしい。先ほどの刺々しい顔はどこへやら、飯田は顔を赤らめ、しおらしい口調で挨拶をする。
けれども、向居の記憶はかなり曖昧だったようで「ああ…」とそっけなく返して続けた。
「転職したのか。でも、そんな必要なかったんじゃないか? 人の彼氏を横取りする卑怯者のスキルはすでに身に付けていたんだから」
飯田のそれまで研ぎ澄まされていた険が一気にもろくなる。
すでに辞めたとはいえ、憧れていた向居に皮肉られるのはこたえるのだろう。
「…卑怯者はどっちですか。仕事で傷ついた彼氏を放っておいて、自分だけほいほい昇進していい思いして」
それでも虚勢を張って、飯田は私に憎しみの視線を向け続ける。



