オプションは偽装交際!~大キライ同期とラブ・トラベル!?~

血の気を失った顔をしている私に、なおも飯田は畳みかける。


「もう解かっていますよね? 基樹さんをずっとずっと傷つけていたのは自分だったってこと。卑怯者ってあなたさっき言いましたけれど、それってあなた自身のことですよね? 本当、最低。自己満足のためだけに気持ちがあるふりをされて裏切られた方の気持ち、考えたことあるんですか? お高くとまってバリキャリ気取っているけれど、あなたには本当はなんにもないってこと、認めたらどうですか?」


飯田と基樹。二人の憎しみの炎にしたたかに焼かれて、私の心はぼろぼろになった。
吹けば消し飛ぶ灰のごとく、今にも崩れ落ちそうになる…。―――けれども、そんな私を、不意にがっしりとした手が支えた。


「…向居…」


向居が私の背後に立っていて、背中を抱いていた。
かと思うと、腕をつかみ私を後ろへ押しやる。その強引さにバランスを失い、私は思わず向居の腕にしがみつく。守るように私を支える、固くたくましい腕に。


「なにを揉めている?」


向居の声は、すべてを見透かしたように落ち着いていた。

そのハイスペッグゆえ、社内で向居を知らぬ者はまずいない。
まさかの人物の登場に、基樹と飯田は唖然としていた。
けれども、私と向居の関係を、自分たち同様不道徳なものと邪推したのだろう。その表情は、すぐにそれぞれ違う色に変わり始めた。
基樹にはあからさまに憤りの色が。
そして飯田には妬みの色が広がる。辞める以前から飯田が向居にご執心だったのは周知のことだった。
飯田は私への憎しみをさらに倍増させる一方で、向居に対してはその険を潜めさせる。

一方、私を背で守る向居は恐ろしく冷ややかな表情を浮かべて飯田を見据えていた。
その表情のまま、向居は棘をはらんだ声を飯田に向けた。