その結びの言葉に私は耳を疑った。

東京駅で? 私が泣いていた?
つまり、二日前の朝。まさに新幹線に乗ろうとしていた時の私を、あまりの惨めさにホームで泣いてしまっていたあの時の私を、向居は見ていたということ?

困惑し始めた私に気付いているのか、少し沈黙を置くと、やがて向居は静かに話し出した。


「この旅行は、偶然お前に会った、ということにしていたけれど、実はちがうんだ」

「……」

「本当は、俺は最初からお前を追ってここに来たんだ。都―――」


向居が私の肩をつかんで、強引に振り返らせた。
向き合う形になっても向居を正面から見つめることはできず、私はうつむいたままでいる。

聞きたくない。

この先の言葉を聞きたくない。
これ以上、進めない。進むのが怖い。
悲鳴のような警鐘が、私の中で鳴り響いている。私は向居に相応しくない、と…。

でも、それと同じように、身体の芯が鋭い痛みでもって訴えてくる。
向居に触れられたい。
向居に抱きしめられたい。
向居に―――。


「都、俺は」


この言葉の続きを、聞きたい。でも、聞きたくない。


「俺は―――」