あんなにキライだったのに…ううん…それは結局は私の誤解からの勝手な思い込みだったんだ。
今思えば、実は私はけっこう前から向居に惹かれていたのかもしれない。
劣等感と憧れがごちゃ混ぜになって判別しがたくなった気持ちを『憎しみ』と無理矢理名付けて押し通していただけなのかもしれない…。
なんて。
そんなこと、どんなに今更考えたって無駄なことだ。
笑みが漏れる。
背後から抱き締める向居には分らないくらいの小さな、自嘲の笑みを。
どうして、今なんだろう。
どうして、こんなにも自分に失望しきって自信を無くしている時に、認めてしまうのだろう…。
「どうだった? 今回の旅行は。良かったか?」
「え?」
ずっと押し黙っていた向居が突然堅い口調訊いてきて、私はびくりとなる。
できるだけ平静なふりをして、返す。
「良かったよ。旅費も無駄にならずに済んだし。予定していたことは大体できたし」
「そうか。じゃあ」
抱き締める腕の力を強めて、向居は吐息まじりに訊いた。
「俺との恋人関係はどうだった?」
今思えば、実は私はけっこう前から向居に惹かれていたのかもしれない。
劣等感と憧れがごちゃ混ぜになって判別しがたくなった気持ちを『憎しみ』と無理矢理名付けて押し通していただけなのかもしれない…。
なんて。
そんなこと、どんなに今更考えたって無駄なことだ。
笑みが漏れる。
背後から抱き締める向居には分らないくらいの小さな、自嘲の笑みを。
どうして、今なんだろう。
どうして、こんなにも自分に失望しきって自信を無くしている時に、認めてしまうのだろう…。
「どうだった? 今回の旅行は。良かったか?」
「え?」
ずっと押し黙っていた向居が突然堅い口調訊いてきて、私はびくりとなる。
できるだけ平静なふりをして、返す。
「良かったよ。旅費も無駄にならずに済んだし。予定していたことは大体できたし」
「そうか。じゃあ」
抱き締める腕の力を強めて、向居は吐息まじりに訊いた。
「俺との恋人関係はどうだった?」



