ひきずるように向居を連れて訪れた今夜の旅館は、昨日とは違って観光界隈のただ中にあった。

部屋に向かう廊下の窓から通りが一望できて、さっきまで渡り歩いていた祭の灯りが夕闇の中で輝いていて、とても綺麗だ。

元は商人の屋敷というのは同じだったけれど、和風モダンに改装した昨日とは違って、ここは造りをそのまま生かした純和風の内装。長い年月を感じさせる木材の床、壁、天井が穏やかな安らぎを与えてくれる。
いたるところに置かれた一凛花が、また愛らしくて和ませてくれて、向居の重い図体を支える苦労を忘れさせてくれそうだった。

二日目の宿も最高だ。
お祭りはラッキーとは言え、やっぱり私の地サーチ力は完璧ね。

けれども向居はそんな私の成果など思い知る余裕もない。
部屋に入った瞬間、窓際の籐のチェアにだらりと伸びてしまった。
これには案内してくれた仲居さんもクスクス笑う。


「そうとうお飲みになったんですね。彼氏さん、ぐでんぐでんですね」

「ええ、まぁ」


苦笑いを浮かべるしかない。いやいや彼氏じゃないです、こんな見境なく飲む彼氏なんて恥ずかしい。

仲居さんはついでにお布団をひいてくださった。
のはいいけれど…。
隣同士で並ぶまっさらな二つのシーツを見て、背筋がゾワリとなった。
今夜も二人で過ごすのか…。しかも理性という武装が解けかかった向居と。

そろり、と向居をうかがってみる…と、むくっ、と呼応するかのように向居が身を起こした。そしてぐったりとしながら立ち上がり、ふらふら~と私のそばへ…。


「だめ、だ…」

「ちょ…な、なに…!」

「ああ、俺もうだめ」

「な、なにが…? っきゃ…!」