私はまだまだ序の口。酔いもやっとまわり始めた頃で気分は上々。思わぬ形でつかんでしまった向居の弱みがうれしくて楽しくて、はしゃいでしまう。


「食べ物もお酒もこーんなに美味しいのになーっ。どうするつもり? 酒とグルメ旅とかの企画がきたら?」

「…るせぇな、やるに決まってるだろ」

「わーぉさっすが完璧リーマン様はちがうわ」


きゃっきゃと笑う私だったけれど、


「…うるせぇ…黙って下手に出てればつけあがりやがって、この酒豪女…。肩、貸せよ」

「…え、ちょ…っ、ととっ…!」


ずしっ、といきなり肩に腕を回された。
向居の重みと体温に急に襲われて一瞬息が止まる。


「ちょっと…! 重いんですけどっ」

「無理。ハイスペッグリーマン向居氏は大酒豪の都さんに完敗しましたー」


なんてふざける向居が顔が、ずいっと近付いて睨んでくる。
ドキリ、と不覚にも心臓が跳ねる。睨むといっても酔っているから迫力はないのだけれど…すわった目がとろりと熱を帯びていて、やけに色っぽい。
…酔ってるくせに色気あるとか反則…! どこまで完璧なのよっ。

もう少しで睨めっこに負けそうになったところで、不意に向居がニヤ、といかにも不敵な笑みを浮かべた。