私は動揺をごまかすように「そうでしょ?」と大袈裟にうなづいて、別の紙コップに一口。
「うん、これはまろやかでお水の良さが出ていると言うか」
「どれ」
と、またも同じようにしてぐい。「うまい」
「えーっと…こっちはイカ焼きに合うような…うんっおいしーぃ!」
「どれどれ…」
そんな感じでお酒と美味しい食べ物を大いに楽しんだ私たち。
一時間近く経つと酔いも十分まわった。酔った勢いで出店のおじさんたちと仲良くなり、この近くでもっとたくさんの地酒が飲めるお店があると情報を仕入れてしまったからには、もう大人しくしていられない。
「よっし!! 次はその店に行くわよっ、向居ぃい!」
と、勇み足でお祭り会場を出ようとした私だけれど…。
「…まだ、か」
「まだ?」
いざゆかん! と威勢のいい私の後ろから、弱々しい声が…。
「まだ…飲みに行くのか…うっ」
よろりとなって、向居は口に手を当てた。
えぇ?!
まさかまさか…



