「ラッキー。お祭りに出くわすなんて! テンションあがってきたー!」

「子供か」


あきれる向居。
いやいや、子供じゃなくてもお祭りはテンションがあがるでしょ。
私、そういう属性の人間なんです。

って、向居もまんざらでもなさそうだ。


「お、焼きそば、お好み焼き。うまそっ」

「こっちは魚貝の炭焼きだって!」

「へぇ、地元の食材か。贅沢だな」


今が旬の魚貝なんて、お店で頼んだら出店で表示されている値段の三倍はする。
なんて太っ腹。
それにしても、この時期にお祭りなんて珍しい。


「祈年祭、ってのぼりがあるね?」

「ああなるほど、これから一年の実りを願う催しでもあるわけか。この地域は海や山に囲まれて特産物が豊富だからな」


そんな重要なお祭りなら、相当規模が大きそうだーーーと思ったとたん、グッドアイディアがうかんだ。


「ね、今日の夕食、これにしちゃおうか?」

「ええ? 出店のものですますのか? 学生じゃあるまいし」

「いいじゃない、たまには」


向居は渋ったけど、私の勢いに根負けしたように笑った。