「お、この店美味そう」

「そうね。うーん、すっごい並んでるよ~?」

「あそこは?」

「料理の品数、もっと多い方がよくない?」


歓楽街を歩きながら、あれは美味しそう、これはなにが食べたいと見て回る私と向居。

ちなみさっきから提案にいちゃもんをつけているのは私だ。
いちゃもんをつける基準は、ずばり料理! …だけじゃなく、客席の造り―――つまり、なるべく二人きりにならないような造りかどうか、だった。
地元の味を楽しみたい…という旅行精神は忘れないけれど、まず第一に判断するのは、向居と気まずい空間にならないかどうかってこと。

なにを意識してるんだか…。
自分に笑える。