「俺はそうやって、地道にすこしずつ前に進んできたんだ。それはきっとこれからも変わらない」


ハイスペッグでもなんでもない。
私と同じ、歯を食いしばって、悔しさに打ちひしがれて、それでもあがいて、ひたすら前に進んできた人間、ってことなのね。

じっと見つめる私の視線がくすぐったかったのか、向居は白い歯を見せて笑いながら続けた。


「って言っても、立ち直って自画自賛するようないい企画を作っても、ライバルにあっさり負けてしまったり、ってことはあるけどなぁ」


と、少し大げさに溜息をついて見せると、向居は顔を向けて、まっすぐに私を見つめた。


「まぁ、おかげさまでもっと打たれ強くなったけどな。そして負けるたびに誓うんだ。『次は俺が勝つからな、逢坂都!』って」

「ええ、私!?」


思わず大声になる私に向居は笑みをこぼした。