「俺さ、子供のころからずっと野球をやっていたんだけれど、戦勝祈願をしによく地元の寺に行っていたんだ」
話を始めながら、向居はちょうど真後ろに用意されていたおそらく鑑賞者のために用意されているのだろう木椅子に腰を下ろした。私も一緒に横に座る。
「そこでいつもいろんなことを考えた。自分の技量のこと野球にかける思いのこと、チームのこと…。静かな寺に来て、あの穏やかな表情の仏様の前に立つと、自然と心が澄み切って、いろんなことがすっきり見えたんだ」
「だから向居にとってお寺は特別な場所なのね」
「ああ。野球をやめた今も、仕事で行き詰まったりすると行くんだ。すると不思議と心がすっきりして次も頑張るか、って思えるようになるんだよ」
私の胸はざわりと揺れた。
向居もそうやってあがくことがあるんだな。
私と同じように、悔しさに打ちひしがれることがあるなんて。
話を始めながら、向居はちょうど真後ろに用意されていたおそらく鑑賞者のために用意されているのだろう木椅子に腰を下ろした。私も一緒に横に座る。
「そこでいつもいろんなことを考えた。自分の技量のこと野球にかける思いのこと、チームのこと…。静かな寺に来て、あの穏やかな表情の仏様の前に立つと、自然と心が澄み切って、いろんなことがすっきり見えたんだ」
「だから向居にとってお寺は特別な場所なのね」
「ああ。野球をやめた今も、仕事で行き詰まったりすると行くんだ。すると不思議と心がすっきりして次も頑張るか、って思えるようになるんだよ」
私の胸はざわりと揺れた。
向居もそうやってあがくことがあるんだな。
私と同じように、悔しさに打ちひしがれることがあるなんて。



