「にしても秘仏御開帳なんて、よく知ってたわね」


二つ目の豆大福を平らげ、残りの抹茶で口の中の甘みを流しながら訊くと、向居は抹茶を男らしく片手でぐいと飲みながら返した。


「ああ。機会があればぜひ見たいと思ってたんだよな」


それってつまり、以前から知っていたってことだ。


「げ。向居ってもしかして、仏女ならず仏男ってやつ?」

「げ、とはなんだ。仏像も悪くないが俺は寺が好きなんだよな。落ち着くだろ」

「落ち着くけど。まぁ地味よね」

「言ってくれるな。まぁ否定はしない」


苦笑いまじりにうなづく向居。


「うーむ、仏像のどういうところがいいわけ? 女の子ならよく八部衆とか四天王がかっこいいからって見に行くらしいけど」


以前、仏女ブームが起きた時に、そういう企画が持ち上がっていろいろ調べたことがあるけれど、いかんせん、私自身が興味ないため、すっかり忘れてしまった。


「それもいいが、俺はもっぱら仏様とか如来様だな。まぁ、見てみれば解かるよ」


豆大福も腹に落ち着いた私たちは、本堂へと向かった。
ここに今しか公開されていない秘蔵の仏像様がおわしますとのこと。

今朝訪れた寺の本堂も大きかったけれど、ここはさらに大きかった。ちょっと入るのをためらうくらい、太い木々が折り重なってそびえたつその雰囲気は荘厳だ。

向居の後について本堂の入口をまたいだ途端、しんと冷えた空気に肌を撫でられる。
線香の香りが、つんと鼻をつく。

うわぁ…大きい。