「な、美味いだろ? 本当は秘仏を拝んでから買うのがここのしきたりなんだけどな。都が甘いものを摂取しないと今にもエネルギー切れになりそうだったから、あえて失礼をした」

「ひ、人を食いしん坊みたいに言うな…っ」


スイーツ切れだったのが見抜かれていた。否定するけれど、たぶん顔が赤くなっているのでバレバレだろう…。
はいはい、と生返事する向居の口元は相変わらずにやけている。
失礼なヤツ、と睨んでいると不意に手が伸びて、


「だから、粉、ついてるぞ。食いしん坊」


私の口元を指先でこすった。
一瞬でさらに顔が熱くなって、私は思わず立ち上がり、


「しょ、しょう―がないじゃない美味しいんだもの!」


靴擦れの痛みも忘れて出店へ逃げ込む。


「もうひとつ買ってくる…!」


向居の笑い声が聞こえてきて、しばらく顔は熱いままだった。