それでも歯車は回っていく3 〜王国滅亡編・下〜



『あるけど、不可能よ。』


ユキナが迷っていた理由はこれだ。ファレリアのショックは、当人以上にでかかったらしい。口をパクパクさせるだけで、声が出なかった。



『…水神様が宿っている所為っていう予想は当たっている。だから、それを引き離せばいい。そうすれば精霊力は吸い取られなくなるし、離れた反動で人知を超えた一度きりの万能回復がおきる。

正確な引き剝がし方は知らないけど、その辺は水神にでも聞けば何とでもなると思う。』



が、その危険性を、それを一番間近で体験した人物は知っていた。シラクスとシュラでやった時は、死が決定していた悪魔の王がシュラ側を引っ張って道連れにすることで、自分を生存させた。


それを今回のケースに当てはめるなら、弱っているフィーネが、通常運転している水神をを引き剥がすことになる。どちらの魂が体を去るか分からないが、現状ではほぼ間違いなく最悪の、フィーネの魂が消えて、魂がない身体に依る水神も消滅するパターンだろう。そうなれば、4種中2種の精霊トップがこの世から消えて、タクトを倒せず世界を蹂躙されるか、世界のバランスそのものが崩壊するという、最悪の未来は変わらない。


確実にする方法はあるが、それは引き剥がした際死へ道連れにしてくれる、二人と同等の精霊量を持つ精霊が居れば。の話だ。


全てを悟って手を固く握り締めたファレリアに、かけられる言葉なんてなかった。



「わかりました。私が聞かなければならないことは聞けましたので、部屋の外にいます。あとはお二人で。」



ワントーン落ちた声で言い残し、部屋を出て行ってしまったファレリアが鼻声だったのは、抱えていた一番上の封筒が少し濡れていたのは、気のせいだっただろうか。



「ピピピッ」と鳴ったのは、立体映像を映している術具だった。



『…そろそろ、術具の効果が切れる頃ね。見て。残量はもう、ほんの少しだけ。』



残量表示のある目盛を見ると、早くもdeadと書かれた赤いゾーンの底ギリギリだった。フィーネちゃんは何かある?と聞かれても、聞きたいことはファレリアが聞いた。

フィーネはもうユキナが目の前にいてくれることで頭が一杯。そんな中で頭をひねっても、それほど聞きたいことなど思い浮かなかった。