それでも歯車は回っていく3 〜王国滅亡編・下〜

「フィーネ?おい!フィーネ!!チッ。連れてけ、オウナ!」



「でもッ…タイガ!!」



「そっちフィーネ連れてかなあかんやろ。やし、正味こっちは二人掛かりでも厳しいやろ?」



「でもッ!!」



オウナさんの言うことを聞かないタイガ。一切気にせず、自信満々に言った。



「足止めの盾、いや、紙くらいにはなっとくで。刀剣・太刀、日本刀!」



無詠唱で出した反りがある刀。この国では珍しいもので、見知っている中では風刃に近い気がするけど、外国の武器だろうかと思わせる形。幾ら学園の資料でも載っていないものだ。



「…分かった。すぐ戻るわ。上級術式、瞬間移動。」



フィルやファレリアが、当たり前のようにホイホイと視界外の瞬間移動をしていらから簡単に見えるかもしれないが、あの二人の精霊量が桁違いなだけで、常人にはそんな芸当出来るわけがない。



オウナも特攻隊と言うだけあって常人離れしてはいるが、何度もやれば戦闘に使える精霊力が無くなってしまう。そうなれば、ある程度の回数制限がある。



「すぐって、思いのほか長く感じるんよなあ。まあでも、いけるっしょ。ユキナがくれたこの武器もあるし。」



自身に無詠唱の精霊力付与をかけると、都合よく上空に現れた一人の少女。



「あら?あたしが直々に来てあげたのに、馬の骨すらいないなんて…キャハッ!──草生える。」



派手な爪を口元にやって笑うと、ガクッと膝が崩れた。



「何や、これ。」



「あら?鼠が一匹?」



タイガに気づくとフワリと着地して無邪気に、且つ優雅に歩いてくる。



「誰や、お前。」



「あたしの前に、太陽は似合わない。初めまして。あたしを知る人からは、月光のマヒナって呼ばれてるの。」



「二つ名とか、ちゃっかりキモい自己紹介しやがって。うっ…。」



重力とはまた違う、脱力(?)的な感覚に陥っていた。そんな彼を一瞥してから、ふと思いつきで言った。