それでも歯車は回っていく3 〜王国滅亡編・下〜

「それだけが狙いじゃないでしょう?オウナさん。」



「あ、バレちゃってました?ファレリア様。」



態と王妃の名を呼ぶオウナ。直後、彼女たちはビー玉サイズの火の玉を無詠唱で数発──院長に飛ばした。



「ッ!!な、何するんですか!?」



「ゔッ!!」



ギリギリ躱した院長。賺さず畳み掛けたファレリアの術式で作り出したチャクラムが頬を掠めて壁に突き刺さった。



「貴方の正体如き、私たちが把握できていなかったとでも?」



「しょ、正体?」



「院長は、生前ユキナさんが作った術式無効化術具を肌身離さず持っているから、初級を躱す必要がないんです。」



「無駄な抵抗はやめなさい。よう精四天王、顔なしのリコ。」



「…まあいいでしょう───いつから、気づいて、いた?」



膨よかな院長が、細身で無口な根暗少年になった。否、根暗少年ことよう精のリコが変身術式を解いた。



「内密にスズさんから情報は頂いていました。確信を持ったのは今日です。院長は、フィーが学園の寮に行くとき何と言ったか知ってますか?──二度とここへは入らせない。」



それを今初めて知ったオウナは唖然とした。



「院長として私に驚いたふりをしたとはいえ、フィーを心底嫌っていましたからね。躊躇なく迎え入れた時が、可能性が確信に変わった瞬間ですよ。」



「…それで、どうする?拘束、監禁、拷問。」



「(オウナさん、瞬間移動で庭まで飛ばします。多分、もう一人来るからタイガの援護を。そしてフィーをここへ。フィーには結界内へと言ってください。)」


「(策があるんですね。了解です。)」



テレパシーの直後、転移術式でオウナが消えた。



「一人、逃げた。まあいい。」



「ッ!!最上級結界術式!!」



最悪を察知して、空間を切り離す類の結界を張った。



「子どもたちに、フィーに、指1本触れさせない。」



「勝負したい、なら、───結界術式は、避けた方が、いいよ。」



「やはり、ですか…。」



パリーン。



「そう易々と、勝たせる気──毛頭、ない。」